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始動した宇都宮LRTの課題(2) ——コンパクトシティの暗雲

実はコンパクトシティ(集約型都市)には、目的を異にする2つの種類がある。目的のひとつは人口が増大する都市の成長を管理するためであり、他のひとつは人口が減少する都市の存続を図るためである。スプロールの抑制策と、スプロールを既定の環境とする計画ともいえる。つまりコンパクトシティは本来型と新型の2系列だ。以下、順に説明しよう。


 まず、ひとつめは人口増大の抑制策だ。これは本来型としてのコンパクトシティの構図である。ローマクラブ『成長の限界』などをきっかけに、20世紀後半から欧米などで進められて来た。旧来の城郭都市を維持するため、人口の急増による郊外へのスプロールを防止する政策であった。したがって計画の実施後も当該市の人口は増加した。クリチバが代表例であり、いわば都市における成長管理策の一環である。


 もうひとつは人口減少への対策だ。21世紀における新型のコンパクトシティ計画である。各種の人口予測を反映して、判で押したように「人口減少に対応」している。都市のスプロールはすでに与件であり、衰退しつつある中心市街地の再活性化策などによって、市内を拠点化してLRTなどの交通ネットワークで結ぶという。この場合には当然ながら人口増加ではなく、むしろ都市の存続可能性が課題になる。青森・富山・大分、そして宇都宮である。


 この2種類では、都市政策のシーンが変わる。前者の本来型20世紀モデルは、膨らむ市域をコンパクトにまとめるための政策である。そこでは外縁の膨張を防ぐことが主な目的だった。これに対して後者の新型21世紀モデルは、すでに拡散してしまった都市の空洞化を、人間が制御できるようコンパクトに再編する政策だ。いわば内包の充実こそが目的になるだろう。破綻に瀕するとされる計画のむつかしさはここにある。(この項続く)

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