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入札談合と公契約条例I ー 新たな改革戦略を探る

 ひところ頻繁に東京2020オリンピック・パラリンピック大会(以下「東京五輪」)の不祥事が報じられた。この大会は最も汚れた恥ずべき頽廃イベントとして歴史に残るだろう。「フェアな」スポーツの祭典などという美辞麗句の背後で、あいも変わらぬ不浄な贈収賄と談合が横行していたからだ。電通マフィアの高橋治之元専務が1億9800万円のワイロを受け取った容疑で逮捕起訴され公判中だ。本人はこれまでの通常業務として派手な口利きをしただけのつもりだろうが、組織委員会の理事は「みなし公務員」なので今回は御用となった。高橋容疑者などの主な目当てはメダルの「金(きん)」ではなく、ただの「金(かね) 」儲けだったのか。五輪汚職を事件にするために当局は、森喜朗元総理との間で「自分を赦して高橋を差し出す」司法取引をしたという疑念もある。


 しかもその入札手続きの多くが「一社応札」であったという(『読売新聞』2022年12月7日付)。これは談合の進化形かもしれない。多くの案件が事前に業界内で細部に至るまで配分調整されており、入札では一社だけが応札して落札し、競争がまったく行われていなかった。そもそも「競争」という言葉は、コンペティション(competition)という英単語の和訳として、明治初期に福沢諭吉が造り出したものだ。それまで日本には競争という概念そのものが存在していなかったことになる。いわば競争の空白地帯だったのだ。


 こうした競争なき談合による発注側の損害は、予定価格の2割を超えるともいわれる(梶原一義「日本型『談合』の研究」毎日新聞出版、2022年)。国民が預けた公金の使い方を適正にするには、公契約の入札においてどのような改善策がありうるか。入札談合と公契約条例について、ながく自治体の審議会などで入札を監視してきた実務経験から考える。

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