わたしにはひそかな特技(?)がある。役所の入札行政を監視して、その問題点を指摘することだ。現にいまも、東京23区のある特別区において、入札監視委員長を4期連続で務めている。さらに作新時代にも、宇都宮市役所で類似の委員会に任期の限度まで参加した。通算するとほぼ15年のキャリアになる。 そもそも本来の公契約には裏も表もなく、公正かつ透明なものでなければならない。特に住民に最も身近な自治体における入札は、納税者に分かりやすいシンプルさが常に求められる。なによりも公費が適正に使われているということは、公務に対する信頼の基礎になるからだ。 ところで入札行政に関連して、このところ国に新しい動きがある。デジタル庁の開設だ。その際に、事業者による囲い込み(ベンダーロックイン)の問題が浮上してきた。わたしの担当する特別区でも、金額ベースでは公契約のうち約半数が随意契約だったことがある。そこでわたしは、主に「一者応札」と「ロックイン」に注目してきた。民による制度の逸脱、そして官の囲い込みだ。 今年9月に国のデジタル庁が新設予定だ。「デジタル社会の形成に関する施策を推進する新たな司令塔」とされる。情報システム関連の国の予算を一括計上して配分するなど、プロジェクトを総括し管理する仕組みをめざす。電子政府(デジタル・ガバメント)への布石である。 自治体レベルではシステムの標準化・共通化を進め、2025年に全国クラウドへの移行をめざす。霞が関のホストに全自治体がぶら下がる端末行政なのか。昨年末の「自治体DX推進計画」をふまえ、「推進手順書」を今夏に提示するという。 ただし国の各府省庁は、霞が関のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化において、ベンダーロックインの問題に直面している。特定のITゼネコンにシステム開発を任せると、自社独自の仕様による設計になってしまい、他社システムに乗り換えるのが困難になることだ。各自治体においても困難な事情はかわらない。 デジタル政策にはロックイン問題が立ちはだかる。かねてからこれに着目してきた公正取引委員会は、さきごろ国と自治体の実態調査に乗り出した。個別の事業者によって府省庁が個々に囲い込まれている現状では、デジタル庁による一括処理など不可能に近いからだ。実はこの問題は、前述の特別区における委員会で以前からわたしたちが指摘してきた論点である。
(都合により、掲載が遅れました。申し訳ありません。aa)
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